不動産

離婚前に共有物分割請求をすることができるのか

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離婚をすること自体については争いがないが、離婚に伴って決めるべき事項に争いがあり、離婚の紛争が解決しないということがよくあります。

例えば、離婚すること自体は夫婦ともに合意しているが、養育費や財産分与等に争いがある場合です。

これとは逆に、離婚自体に争いがあり、離婚を決するのに時間がかかるが、離婚に付随する事項について早く決着をつけたいということもあります。

例えば、離婚自体には争いがあるが、毎月ローンを支払っている夫婦共有名義の不動産があるため、離婚の結論が出るよりも先に不動産の問題を決したいという場合があります。

それでは、このような場合に離婚するよりも前に共有物分割請求をして夫婦間の不動産の共有問題を解消できるのでしょうか。

以下では、夫婦間において共有不動産がある場合における共有物分割の可否について解説をしていきます。

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財産分与と共有物分割の関係についての問題

夫婦間における共有物分割請求の問題点

まず、一般論として、不動産を共有している場合は原則として共有物分割請求をすることができるはずです。

しかし、夫婦間における共有財産の共有物分割請求の可否については若干議論があります。

それでは、なぜ夫婦間においては共有物分割請求ができるかということが問題になるのでしょうか。

その理由ですが、夫婦間においては、財産分与という離婚時において夫婦共有財産の精算するという制度が存在するからです。

財産分与という離婚の際の特別の制度がある以上、夫婦間の共有関係の解消は共有物分割請求ではなく財産分与によるべきではないかとも考えられます。

このように夫婦共有財産の共有関係の解消のためには財産分与によらなければいけないとすれば、離婚とは別に共有物分割請求をすることができなくなってしまいます。

裁判例の紹介

それでは、どのように考えればよいのでしょうか。

この点が正面から問題となった裁判例としては、東京地裁平成20年11月18日判決があります。

この判決では要旨以下のように夫婦間の共有財産の処理については離婚に伴う財産分与に限定されることはなく、共有物分割請求をすることができるとしています。

・判例上、遺産分割の場合は共有物分割ではなく、遺産分割審判によって分割するべきとされているが、財産分与と遺産分割ではその前提が異なるので(前者は前提問題を解決するために遺産確認の訴え等の手段があるが、後者には無い等)同一に解する必要は無い。

・夫婦間における共有物分割請求を認めたとしても、個別的に共有物分割請求が不当な場合は権利の濫用によって解決することで妥当な結論を導ける。

の裁判例のほかにも、夫婦間においても共有物分割請求をすることができるか争われた事案において、共有不動産が財産分与の対象財産であることだけを理由に共有物分割請求をすることを否定しなかった裁判例は存在します(例えば大阪高裁平成17年6月9日判決)。

その他、後述する権利濫用で請求を棄却する裁判例もありますが、これらの裁判例は夫婦間において共有物分割請求をすること自体はできることを前提として判断しているように思われます。

したがって、夫婦間において共有物分割請求をすること自体は可能である可能性は高いでしょう。

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潜在的な持分にすぎない場合は共有物分割請求ではなく離婚に伴う財産分与請求をすべき

以上は、登記簿上も不動産が共有とされている場合の事例を前提に、夫婦間において共有物分割請求をすることができるかについて検討しました。

これと異なり、登記簿上夫または妻の単独所有の場合は、夫婦間で潜在的な持分を有していたとしても共有物分割請求をすることはできません。

なぜなら、共有物分割請求のためにはあくまで持分が顕在化していなければならないからです。

この場合は、離婚と同時または離婚後に財産分与をすることによって夫婦間の共有財産の精算をしていくことになります。

共有物分割請求を提起しても権利濫用にあたらないことが必要

前述のとおり、夫婦間においても共有物分割請求をすることは可能と考えられますが、共有物分割請求が認められるためには、これとは別に共有物分割請求が権利の濫用にあたらないことが必要になってきます。

この共有物分割請求が権利の濫用にあたるかは、共有物分割請求によって失われる利益とこれによって得られる利益、共有物分割請求の主観的意図等から総合的に判断されます。

権利の濫用に当たるかは個別具体的な事情にもよりますが、例えば、特に共有物分割を行う必要もないのに対して、もっぱら配偶者を困らせる意図で共有物分割請求をした場合は権利の濫用に該当する可能性は高いと言えそうです。

終わりに

以上、夫婦共有財産における共有物分割請求の可否について解説をしました。

解説をしたとおり、財産分与の対象となる財産であるからといって、それだけで共有物分割請求が否定される可能性は低いと思われますが、共有物分割の必要性や目的等から個別的に権利の濫用に当たると判断されることもあるので注意が必要です。

このように夫婦間の共有物分割請求は個別的な事情によってその可否が変わることから、離婚前における共有物分割請求を行うに当たっては、弁護士に相談されることをおすすめいたします。

離婚及び共有物分割請求についてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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