ニュースによれば、法務省が養育費の不払いの問題を解消するために、民事執行法の改正手続の準備に入ったとのことです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK12H3N_S6A910C1000000/
民事執行法の改正が必要となった背景としては、養育費の不払いの問題があったようなのですが、従前養育費の回収はどのような方法で行われ、今後法改正によって養育費の回収方法はどのように変わっていくのでしょうか。
以下では、相手方配偶者から養育費が支払われない場合においてどのような方法で養育費を回収していくのか、また、法改正によって養育費の回収がどのように容易になるのかについて順番に解説をしていきます。
[ad#adad-1-1]
現在の養育費の支払確保の方法
まず、相手方配偶者との間で養育費の支払を合意し、合意どおり相手方配偶者が養育費を支払ってくれれば何も問題はありません。
もっとも、養育費支払の合意をしたものの、合意後すぐに支払いが無くなってしまった、または、合意当初は支払われていたが、途中から支払が無くなってしまったということがあります。
このような場合は、どのようにして養育費を回収するのでしょうか。
書面での支払請求または履行勧告を行う
まず、現時点では支払いが滞っていたとしても、本人名義での内容証明郵便や弁護士名による内容証明郵便を作成・発送することによって、相手方配偶者が任意に支払をしてくる可能性があります。
特に弁護士名での書面の場合は、任意での支払いをしない場合はその後別の手続を進めてくることが想定できることや、本気度が違うと相手方に認識させることができるため、相手方配偶者が内容証明発送後に滞納していた養育費を払ってくる可能性もあります。
したがって、まずは書面による請求をするのも一つの手でしょう。
次に、裁判所による履行勧告という手段も考えられます。
この履行勧告は、調停や審判によって養育費の支払義務が定められたにもかかわらず、相手方がこれにしたがって養育費を支払わない場合に、裁判所から相手方配偶者に対して、履行するよう連絡する手続になります。
ただし、注意点があり一つは、あくまで調停や審判などの裁判所での解決がされた場合に限られており、裁判所外での手続の場合は、この履行勧告という手続が使えません。
また、2つ目としては、履行勧告は裁判所を介す手続ではあるものの、これに従わなかったとしても、強制力はなく、実効性があまり大きくないという点です。
[ad#adad-1-1]
強制執行の申立てを行う
以上の書面による請求や履行勧告と異なり、強制執行の場合は相手方の意向にかかわらず強制的に養育費を回収することができます。
もっとも、以下の点に留意しなければいけません。
養育費を強制的に回収するには調停調書等の債務名義が必要
まず、強制執行の申立をするためには、ただ相手方配偶者との間で合意をすればよいのではなく、債務名義と呼ばれる書面が必要になってきます。
債務名義の具体例としては、調停調書や判決、和解調書、執行認諾文言付きの公正証書になります。
基本的には、債務名義は裁判所を介して作成された書面になりますが、公正証書のように裁判所を介さないで作成することができる書面もあります。
強制執行をするためには強制執行の対象となる財産を特定しないといけない
上記の債務名義を得たとしても、養育費の請求権者側で強制執行の対象となる財産(不動産、預貯金、給料等)を見つけた上で、その財産に対する強制執行の申立をしなければいけません。
相手方が不動産を持っている場合はいいですが、養育費を支払わない場合は財産がなく不動産を持っていないこともままありますので、その場合は職場等が判明している場合は給与等の差し押さえ等を検討することになります。
一度相手方の財産を差し押さえれば、将来分まで差し押さえることが可能
上記強制執行の申し立てを行い、相手方が財産を持っていることが判明した場合、強制執行は功を奏すことになります。
では、養育費は毎月発生するものですが、支払期限が到来するたびに強制執行の申立をしなければいけないのでしょうか。
この点についてですが、養育費の場合は一度相手方の財産を差し押さえれば、将来分まで差し押さえることが可能になります。
ただし、将来の養育費については、支払期限が経過してから回収ができるにすぎませんので、この点について注意が必要です。
民事執行法の改正によって財産の調査範囲が広がり、差し押さえが容易になる。
以上、養育費の回収方法について解説しましたが、今回法律が改正された場合はどのような違いが生じるのでしょうか。
結論を先に言えば、現在強制執行を申し立てる側で行わなければいけなかった財産調査を、裁判所を介してできるようになるという点です。
例えば、現在では相手方配偶者の銀行口座を支店レベルで特定しなければいけませんが、今後は裁判所を介して支店名や残高等の調査ができるようです。
具体的にどこまでの調査が可能であるかはおそらくまだ詳細は未定とは思いますが、制度によっては養育費の回収率が大きく向上するかもしれません。
終わりに
以上、養育費の回収方法と法改正について解説いたしました。
養育費は自分のことではなく、子供に関するものなので、きっちり回収をしたいところだと思います。
養育費を含む離婚についてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。[ad#adad-1-1]