離婚

どれくらい別居をすれば有責配偶者は離婚できるか②

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離婚訴訟や離婚調停において相手方が有責配偶者であるにもかかわらず、離婚請求をしてくる場合があります。

また、これとは逆に自分自身が不貞行為等の婚姻関係を破たんさせた行為をしたがどうしても離婚をしたいため、離婚請求をするという場合もあります。

両者のいずれであっても、まずは、ご自身の離婚請求、または、ご自身に対する離婚請求が認められるかということが非常に気になるところだと思います。

有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、前回の「どれくらい別居をすれば有責配偶者は離婚できるか①」という記事で紹介したとおり、同居期間との比較における別居期間、未成熟子の不存在、離婚請求の認容によって相手方が精神的及び経済的に苛酷にならないことが必要とされています。

上記の要件のうち、別居期間の要件について気にされるご相談者様が多いですが、一般的には10年を超えると長期間の別居ということが言いやすくなりますが、「何年」という期間であれば有責配偶者からの離婚請求が認められるというものでもありません。

短期間の別居であっても、有責配偶者からの離婚請求が相当であるとされる事案においては離婚請求が認められています。

以下では、どれくらいの別居期間であれば有責配偶者からの離婚請求が認められるかという疑問に対し参考になる東京高裁平成26年6月12日判決の事例(裁判例)を紹介してきます。

別居期間が2年程度でも有責配偶者からの離婚請求を認めた。

裁判例の事例紹介

上記裁判例の事例は以下の通りです。

  • 夫と妻は平成17年6月に結婚し、二人の間には未成年者の子が二人いた。
  • 夫は日本人であるが、妻はフランス人である。
  • 平成24年5月に妻は子供を連れて別居を開始し、妻の方から夫に対して離婚請求を行った。
  • 第1審では、夫婦関係の婚姻関係は破たんしておらず、また、仮に破たんしていたとしても、婚姻関係の破たんは妻が別の男性との同居を望んだことによるものであるから、妻は有責配偶者であるので妻からの離婚請求は認められないとした。

このように、本裁判例の事案では、夫と妻の同居期間は約7年であるのに対し、別居期間は約2年程度という事案であったため、第1審では妻からの離婚請求は棄却されていました。

本判決の判示の内容

これに対し、本判決では、婚姻関係の破たんを認めた上で、まず有責配偶者からの離婚請求についての考えについて、以下の通り判示しています。

離婚請求が、その事由につき専ら責任のある一方の当事者(有責配偶者)からなされた場合において、その請求が信義誠実の原則に照らして許容されるか否かを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度はもとより、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、特に未成熟子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係等が斟酌されるべきである(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決(民集四一巻六号一四二三頁)。そして、これまでそのような有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の一つには、一家の収入を支えている夫が、妻以外の女性と不倫や不貞の関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求をそのまま認めてしまうことは、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に不安定な状態に追い込まれてしまい、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があったものと解されるから、仮に、形式的には有責配偶者からの離婚請求であっても、実質的にそのような著しく社会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ、その離婚請求をどうしても否定しなければならないものではないというべきである。」

その上で、本裁判例の事案においては以下の通りの事情が認められることから、有責配偶者からの離婚請求を認めました。

  • 最初に離婚を切り出したのは夫側であり、しかも、妻に夫の言うことを聞かせようとして、夫が妻の携帯電話やメールやクレジットカードを使えなくするなど実力行使に出て、妻の人格を否定するような行動をとったこと。
  • 妻が他の男性と交際するようになったことについては、フランス人として個人の自由や権利を尊重することを当然のこととする控訴人の気持ちや人格に対する十分な理解や配慮を欠き、妻を追い詰めていった夫にも相応の原因があるというべきであること。
  • 夫婦には未成年の2人の子がいるが、妻には働きながら両名を養育監護していく覚悟があり、妻による養育監護の状況等に特に問題もないこと。
  • 夫は、もともと控訴人との離婚を求めていた経緯があるだけではなく、1000万円に近い年収があり、本件離婚請求を認めたとしても、妻が精神的・社会的・経済的に著しく不利益な状態に立ち至るわけでもないこと。

有責配偶者からの離婚請求と別居期間との関係は事案の総合評価になる。

上記のとおり本判決は別居期間が2年程度にもかかわらず有責配偶者からの離婚請求を認めています。

但し、これについては一般的にこの程度の別居期間であっても離婚が認められるというように考えるのは危険であると考えられます。

本裁判例が有責配偶者からの離婚請求が制限されるそもそもの考えに戻った上で一般的な考えを述べ、その上で本件では、離婚請求を受けた側にも相応の責任があり、他方で、離婚請求を認めても離婚請求者を不当に利するわけではないことから有責配偶者からの離婚請求を認めているように思えます。

したがって、本裁判例を前提にすると、別居期間が短い有責配偶者からの離婚請求であっても、本裁判例と同様に離婚請求を認めても信義則に反しない事情があれば、有責配偶者からの離婚請求が認められることになる方向になり、他方で、そのような事情がなければ有責配偶者からの離婚請求は棄却になるでしょう。

そうした意味で、別居期間という一つの要素ではありますが、事案によっては重視しすぎることもないのかもしれません。

終わりに

以上、別居期間がさほど長くないと思われる事案でありますが有責配偶者からの離婚請求を認めた裁判例を紹介しました。

有責配偶者からの離婚請求は、裁判例の傾向や離婚に対する考え方によっても結論が変わりえますので、準備が大事だと思います。

自分の事案では離婚請求ができるのだろうか、または、離婚請求をされているが離婚をしなくてはならないのだろうかと疑問がおありの方は、30分の無料相談を利用して疑問点を解消して頂ければと思います。

有責配偶者からの離婚請求についてお悩みの方は、有責配偶者からの離婚請求を含む離婚問題に強い東京都中野区の吉口総合法律事務所までご相談ください。

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