離婚

どれくらい別居をすれば有責配偶者は離婚できるか①

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以前の記事で紹介したとおり、自分が不貞行為等をしたことによって婚姻生活を破綻させた配偶者は、他方配偶者に対し離婚請求をすることが難しくなります。

不貞行為等をした配偶者のことを有責配偶者というのですが、以前の記事で紹介したとおり有責配偶者による離婚請求が認められるためには、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が無いことが必要になります。

どれくらいの別居期間があれば離婚できるかは一概には言えない。

この有責配偶者からの離婚請求において、別居期間が一つの要素になるのですが、それではどれくらいの別居期間があれば有責配偶者からの離婚請求が認められるのでしょうか。

これについては、残念ながら●年あれば離婚できるというような答えはありません。

なぜなら、判例を調べてみればわかるように、判例は、別居期間と同居期間、離婚を認めることによる相手方配偶者の過酷さ等個別の事案における事情を総合的に判断して結論を出しているようからです。

そこで以下では、最高裁の判例で有責配偶者からの離婚請求を認めた判例を紹介し、どのような事情があれば有責配偶者からの離婚請求が認められるかについて解説していきたいと思います。

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判例の事案は別居9年8ヶ月、同居17年2ヶ月

紹介する最高裁判例は、平成5年11月2日第3小法廷判決になります。

この判例は別居9年8ヶ月、同居17年2ヶ月という事情のもと、有責配偶者である妻から夫に対する離婚請求を認めた高裁の判決を是認しました。すなわち、最高裁が有責配偶者からの離婚請求を認めたということになります。

ただし、この判例を理解する上では、別居期間と同居期間だけではなく、以下の事情があったことも踏まえる必要があります。

  • 夫は、妻に相談すること無く仕事を辞め、退職金を原資にして調理学校に通って調理師免許を取得したが、特に取得後の明確なビジョンはなかった
  • 夫は、退職後特に働くことも無く家の中にいることが多くなり、夫婦間の性関係は退職後は途絶えた。それに伴い妻の帰宅も遅くなった。
  • その頃から、夫は妻に暴力をふるうようになり帰りの遅い妻のベッドに水をまいたことや、妻にバケツに入った水をかけたこともあった。
  • 夫は、その後就職したが生活費を家に入れることも無かった。その後、夫が妻の帰りが遅いことを詰問したところ、いざこざになり、夫が食卓をひっくり返したところ、長男が負傷する事態になったことから妻はそれ以後別居を開始した。
  • 子供はそれぞれ25歳、23歳であり、離婚をすることに反対していない。
  • 妻の離婚意思は非常に堅いが、夫は離婚を求められる理由は無いと考えており、離婚に応じる意思はない。

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本判例では夫側にも問題があったため離婚が認められたと言える

以上の事案のもとで、最高裁は有責配偶者からの離婚請求を認めた高裁の判断を是認しています。

高裁は以下のような理由から離婚請求を認めています。

  • 婚姻関係が破綻したのは主として妻側にあることは間違いないが、退職の際及びそれ以後において夫としての責任を果たさず暴力行為陰湿な嫌がらせを繰り返した夫側にも少なからず責任がある。
  • 二人の子はともに成年に達していて離婚に反対していない。
  • 夫は離婚を拒否しているものの、婚姻を修復する積極的な意欲はうかがえない。

以上のとおり、有責配偶者からの離婚請求を認めた最高裁判例のなかでは、同居期間が17年2ヶ月に対して別居期間が9年8ヶ月というのはそこまで長いわけではありませんが、本判決は有責配偶者からの離婚請求を認めました。

最高裁判例がこのように有責配偶者からの離婚請求を認めたのは、判決にも記載されているとおり夫側にも婚姻関係を破綻させたことに相応の理由があり、妻からの離婚請求が信義に反しないと考えられたためと思われます。

この判決にしたがえば、自分自身が有責配偶者であり別居期間が9年から8年程度であっても、他方配偶者にも婚姻関係破綻の責任が認められれば、離婚請求が認められる可能性があることを示した点で参考になる判例と言えるでしょう。

終わりに

以上、どれくらい別居をすれば有責配偶者は離婚できるかという問に対する一つの事例判断として判例を紹介しました。

有責配偶者からの離婚請求は個別の事情によって結論が変わるので、一概に答えることは難しいですが、現在の最高裁判例だけを参考にすると別居期間が10年を切っていても有責配偶者からの離婚請求は認められるようです。

ただし、繰り返しになりますが、有責配偶者からの離婚請求が認められるか否かは一般的な基準を立てることが難しく判例を詳細に調査することが必要になります。

したがって、離婚に悩まれている方はまずは自分が離婚できるか弁護士に相談されることをおすすめいたします。

離婚問題についてお悩みの方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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